「俺たちのBL論」フワッとした感想・所感(2019年1月2日下書き)

ボクたちのBL論 (河出文庫 さ 41-1)

ボクたちのBL論 (河出文庫 さ 41-1)

 

商品検索して文庫版も出てたのか……と思ったら改題されてる上に内容追加されてるのか!(読みたい)

BLというジャンルについてすごく丁寧に掘り下げてる良書なので題材(論じられてる対象・こと)に少しでも興味があればぜひ読もう。どんな本かは後述の感想を読めば少し分かる……はず!
あとついでにがい子くじん先生のメガネコウハイ(おもしろBL4コマウェブ漫画)も読もうな。

www.pixiv.net
ところでこの記事、道具としての「メガネ」と作品名の「メガネコウハイ」が両方出てきてちょっと紛らわしい。

2019/01/02
「俺たちのBL論」フワッとした感想・所感

俺たちのBL論

俺たちのBL論

 

 

本にあまり関係ない所感
・自分は「BL」という文化に惹かれるものがなんとなくある、興味がある
└「男性同士の恋愛が好き」という意味ではなく、文化そのもの、腐女子と呼ばれる人たちの熱量や文化の独自性に惹かれるものがある(それを知りたい、分かりたい→「知的に惹かれる」みたいな感じ)、ここ1-2年は自分から読んでみるようにもなってきた
エロゲー/アダルトゲーム、同人音声なんかも似たところがあるけど、BL文化は極めて特異な印象がある

本の感想的な部分
・「BL(カップリング)は高度な知的遊戯」めちゃくちゃ言い得て妙、なるほど! と思った
大喜利みたいだなと思った(一定のルールのもとに分解と再構築を行う)
└この論理でいくとメガネコウハイめちゃくちゃ高度なBL作品なのでは…?(男性カップルによるメタ視点からの(自身らの関係の)分解と再構築、最終的には「男性同士の恋愛関係を描いた作品」として収束する)
言語化、再解体、本になってまとまってることに意義がある(見聞きしてるうちに自然と体感/感覚的に分かることも多いけど)
・ちょいちょいエッチなイラスト挟むのやめてくれます!!?!?(直接的なエッチではないが雰囲気がエッチ(一番エッチなやつ))
サンキュータツオさんの話の進め方、言葉の選び方がうまい
└立ち読み段階のまえがきで「この本を編むにあたって」って言い方してて「あっもうこれ買うわ、約束された勝利の件だわ」ってなった
└時代劇で例えてるの笑ってしまう(噛み合ってる(+話が円滑に進行してる)のがすごい)
└「BLは関数」「リバ不可は関係性、リバ可は絆」
└というか導入からもう上手い、「鉛筆と消しゴムの関係性を想像してください」って良いつかみだと思う(一見突飛な課題の提示→そこから広げて丁寧に説明していく)
・「いい箱庭は、シルバニアファミリーとかディズニーランドみたいに、ずっといられる異空間、浸っていたい世界ということになる。そしてそこでの妄想が無限!」
・「少女マンガはなるべく男女を描きながら性欲を切り離していく作業」なるほど…
・ページ下部の注釈/用語解説が面白い(好き)
・「二次元において性は属性でしかないんです」
└全体的に「『萌え』とはなんぞや」的な部分にも触れている印象がある
・「萌えとは不作為の覗き見、知る喜び」
└付箋したい言葉ばっかり出てくるなこの本な!?(言語化うまお)
・「BLメガネは花粉症、あるいは自転車に乗るスキル」
・「ジャンルの中で振れ幅がある」
・読んでて、自分の中の萌えと向き合う(分析、観察する)感じあるな…
└自分はたぶん、大体「Aから順序立ててDに向かう(AからいきなりDに行かない)」タイプの作品が好きなんじゃないかなと改めて思った(イブアンドローク読んでモヤった部分これだよな…)(描き方にも多分よる)
└萌えを考えることってやっぱり自分の好きなものから闇までに向き合うことだなあ…(本の中で同じようなこと言われてて草)
・「ファンタジー空間としての男子校」
言語化ありがとうブック…(毎秒100万回スクショしてぇ…)
・最初の方から「(BLの話は)最終的には個人的なこと」って繰り返されてると思うんだけど、だからこそ興味を惹かれるんだろうなとは思う(絶対的な答えが無い、新たな解釈を発見できる)
・いやほんとメガネコウハイ優れたBL(BL入門)では…?
・「冷蔵庫と電子レンジ」の問題考えてたら最終的に「ウェーンよ゛か゛っ゛た゛ね゛冷゛蔵゛庫゛ぉ゛…」ってなってしまった(なんだこれ)
└気付いたら嗜好として類型化できる感じの関係性になってたのでびっくりしたし、「冷蔵庫と電子レンジ」だからこそ気付けたんだけどなるほど自分は「優しく需要的で温かい子(他人の心を温められる子)」と「クールだけど実は誰かに温めてほしくてたまらない子(実は面倒見良かったりするところが良い、一見温かい子より能力が優れてたり見た目が大人っぽかったりするの好き)」の組み合わせに萌え(救済、尊み)を強く見出してるんだなあと…
・やっぱBLないしカップリングって大喜利じゃん(再確認)
・仲の良い異性コンビ(友達、相棒など)が好きなので「男女だと性行為が絡む」理論にはちょっとうーんって感じなんだけどなんかこれもしかして異性コンビをBLメガネ的視点で見てるんじゃないか?(この本の言語に合わせて物を言ったり解釈するのならば) と思った
└パシフィックリムのブレインハンドシェイクって実質性行為じゃんと思ってるんだけどこれはBLメガネ的視点なのかもしれない、みたいな…
└「いきすぎた友情と愛情のもう境界線がよく分からなくなってるところ(P.212)」「関係性の中から放たれた輝き(P.213)」
・「余白と補完」「歴史学に近い遊戯」「答え合わせのカタルシス」(P.222) これ自分が一次創作でやってるやつだ…(前の方でも思ったけど)
杉田智和がコトダマンの一部設定担当として受けてたインタビュー記事で自分と同じような考え方(キャラの掘り下げ、推理/推測的な広げ方)してたの見て「やっぱするよね!?(!!!!!)」って思ったことがあるんだけど、前の「電子レンジと冷蔵庫」のところまさにこういう考え方しててなんというかつまり自分BLの才能あるな!?
└P.146の「絆を描けばBL的になっていく」のところでも「ああ、だからか…(一次創作男性コンビがどんどん恋愛的な関係性を含んでくる(最近は「あ、これいけるわ/カップリングとして成立する可能性あるわ」みたいな半ばふざけ的な気付きを見出す遊びすら行う)ことについて)」って納得があった
└ラブコメ好きなのでそもそもの素養としては十分なところあるよな
・『「BLにおける絡み」っていうのは、「お互いにとって特別な存在であることの証明』『答え合わせの愉しみと「あ、一緒になったんだな」っていう、「ありがとう!」な感じ』(P.225) これ(同意)(ほんとそれ)
・ボーイッシュいいなが男の娘いいなになってショタもいいなになって……ってとこすごくよくわかる
・「いわゆる草食って言われてる人って〜(P.228)」すごくなるほど(新しい知見だ)って感じだ…!
春日太一さんホントめちゃくちゃ優秀な受講生では…?
└これ人選が優れてるよな…。意図的に素養ありそうって選んだのかそれとも偶然噛み合ったのか…
└春日さんの「女性的な感性(語弊ありそうだけど)」が本当にすごく良く作用してると思う(春日さんの解釈に)
・「女性評論でもある説(P.230)」はセンシティブだからマジでやめとけ!?(わかるけども!)
└男性である二人が「でも自分たちも共感できるよね」「おもしろい!」って言ってるところとか見るに「下衆の勘繰り」的なものでなく純粋に論議や一説として話してるように受け取ることができる点すごくいいなと思う(他の部分に関してもそうなんだけも、知的な議論や談義や推測として二人がこの話題を楽しんでる感じすごくいいなと思う)
└というか「男性が男性に行うBL講義」って状況、すごくメガネ案件だと最初の方から少し思っていた(そういう時点でもう関係性じゃん、もはや"行為"じゃん、実質セ案件じゃん、ってなってた)
└自分が男性向け同人音声好むの「(やっぱ)逆BL案件じゃん!!?」って(改めて)思った。「性別という観念が苦手、社会的観念から逃れたい」みたいなソレ(女性相手の男性向け音声を聞く(男性キャラでも女性の演じる少年キャラはいける(たぶん女性向けでも)、男性声でも女性優位+女性側のキャラ性がハッキリしてるのは平気っぽい)、いわゆる乙女向けコンテンツの雰囲気が苦手→女性として扱われたくない/そういう観念への嫌悪感 ※かわいいものが好きというのは強くある
└自分に紐付けて考えたくないけど…萌えとは自分と向き合うこと(というか自然となんか自分を考察しようとしちゃう動きが出る)なので…なんかそうなってしまうところがある…
└センシティブ! ってなるのはつまりそういう要素"も"含むところはある。でも必ずしもそれだけって訳でなく、可愛がりたいと可愛がられたいはどっちでもあるしどっちでもない(観察/応援などの第三者視点、両者揃っての萌え/尊み)よなあ…。これは同じような自問自答をしてて思ったことなんだけど、創作ワールド(キャラ、関係性含む)って最終的には『お前の体は宇宙の全てと繋がっていながら、お前にしかなり得ない。お前の魂は宇宙の全てを含んでいながら、お前でしか有り得ない。それはこの私も、そして誰しも。誰かが憎ければ、お前は自分を憎んでいる。誰かを愛していれば、お前は自分を愛している。(カウボーイビバップ よせあつめブルース)』ってこと/〜に収束するんじゃないかなあって(もちろん個人の見解/感想)。必ずしも「これ」ではなく、「どれでもあり得るし、複数かもしれないし、あるいは全部かもしれない」ということ
└創作ユニバースの掘り下げや拡張、キャラや生じた関係性を愛することって自分を(やがては世界を)愛しようとすること、愛すること、自己の救済/他者の救済に繋がることなんじゃないかと思ったことがあるし、現在それを支持している。「『かわいい』は不完全を愛すること」だとこの本で言われてたけどまさにそれで、創作キャラって自分(であり、そして無い)なので、もしかしたら『オタク特有のすぐ好きなものに共通点見出すムーブ』なのかもしれないんだけどなんか自分に通じるところがみんな多分あって、だからキャラの弱点を可愛いと思ったり愛おしく思ったり境遇に同情したり気持ちに共感する(同調だけでなく「あなたが嬉しいと私も嬉しい」みたいな意味も含む)のって自分を愛そうとする心だし(あるいは結果的にそれに繋がるし)、それに寄り添ってくれるキャラは自分を愛そうとする心の具体的な表れ/具現化なんじゃないかなと思ったりもするんだよな…
└これは最初の方にあった『「オタク」「腐っている」は謙遜表現、他人に言われる/他人が言う言葉ではない』みたいな部分だと思う(他人に指摘されても(自分でその悟り/理解に至らなければ余計に)ムッとしたり嫌に思う部分、なのでつまりセンシティブな部分ってことだ)
・BLと百合の違い
・「路地裏生命体」って表現すげーなるほどって思った。あれは「陵辱でなく愛撫」「"受け"を褒めてる」って視点がすげえなるほどなー…と思った(関係性の上に成り立ってる行為なら分かるけど、そうじゃなくいわゆる「モブ姦」みたいなタイプのやつについて)
・結論としてすげー面白かった! 男性が男性向けに論じてるのがポイントな本だなと思う。あと他人の恋バナとか恋愛観みたいなやつ(もっと平たくすれば他人の思想、何考えて生きてるかみたいな)好きなのでそういう込み入った話を安全な場所から聞けるところも面白かったかもしれない(これBLの素養だな?)
・春日さんの成長っぷりホント目覚ましいな!? そのありそうな人を拾ってきたのかそれとも偶然なのか(あるいは意図した部分としてなかった部分がどっちもあるのか)すげえ気になる
・「男だって女の子になりたい」みたいな要素って一般的な男性向けエロだと違うんだな〜と思った(いわゆるバブみ、甘い系の女性優位/男性受け(ex. おねショタ、伊東ライフ、癒し系同人音声)シチュ/ジャンルって自分がそういうクラスタ、あるいはそういう嗜好の人が観察域に多いからわりとポピュラーだと思ってるだけで実はそんなでもないのか…!?)
└2015-2016年の本なので今は少し違ってる(当時よりこういう価値観の知名度が上がってる)可能性があるかも?(少なくとも二次元オタク文化圏だと)
└特に「男性も女の子に」的な話題に関してはバ美肉が出てきたりしてるしな
・巻末のそばとうどんのお題はボードゲーム的な遊び方したらすごく面白いかもと思った
・対談形式なの読みやすくていいよね(先生と生徒の役割って疑問と解説がキャッチボールになるからいいよね、ビギナーは生徒側に感情移入もできるし逆に玄人は生徒の成長を先生側と一緒に見守ることができたりする)
・世界の捉え方に関して「こういう視点もあるよ」の本
└本文中でお二人が言ってたり読書メーターで突っ込まれてたりするようにあくまで「萌えは個人的なもの」でありこの本における「BLという概念」についての解釈はあくまで「この人たちの解釈」なんだなということは忘れずにいたい、いてほしい
└とはいえ入門としてはこの上なく丁寧で分かりやすく最適な本なのではないかなと思う、理解(共感)できなくても「そうか、こういう見方もあるんだな」ってことを知ることのできる本だと思う(本文中の表現で言えば「BLってなんかこういうやつだろ? っていう偏見、理解が無いのに乗ろうとしてくる上司」みたいな状態にならないため(→そういう人たちを無為に傷付けないため?)の本というか)
└「知らない世界/視点がある」って識るだけでも自分の世界ってグイッと広がるんじゃないかな、と思う
└これが「○○メガネ」ちゃんですか…(なるほど)
・読んでみて、新しい言語をひとつ獲得した感じがする
・無機物BLって擬人化ありきなんだな(そうじゃない人もいるにはいそうだけど)
└「あ、だから(2ちゃんねるにおけるそういう話題のカテゴリって)『801板』なんだ!」という発見(理解)


BL以外のキーワード:関係性/絆、擬人化、萌え、かわいい、性別の超越(性別という観念からの逃避、逸脱)、性別的な観念の違い(ステレオタイプ的な物事の見方)